短い付き合い
TC-FX1010というカセットデッキ。
操作ボタンやボリュームツマミなど一切ないフル・
フェザータッチ。そのため、全面がフラットという変わり種のカセットデッキ。
本来は操作系、調整系がたくさんある機器を選ぶはずなのだが。
という訳で、意に反した物を買ってしまった。
ほぼ自動でカセットテープ特性に合わせて調整してくれる。3ヘッドで、録音ヘッドと再生ヘッドは別々にアジマス調整が出来るとか、ドルビーBに加えCタイプも搭載。別売りだが,リモコンがあったりと当時としては最先端の技術を搭載したエポック・メイキングなデッキだったと記憶している。
しかし、これだけの機器を僅か3ヶ月で手放してしまった。
当時付き合っていた彼女と結婚することになっていたのだが「婚約指輪は給料の3ヶ月分」という事で、資金集めに奔走しなければいけなくなった。
生命保険の解約から始まって、とにかく現金化出来るものを片っ端に。
それでも予算に10万円ほど届かなかった。
悩んだ挙げ句、会社の部長さんに相談してみた。
正直、買値は10万円以下だったのだが。
「よし、御祝儀代わりだ。」
そう言って、10万円で買ってくれた。フェザータッチの機器なので、汚れや傷はほとんどなかったので、売る側としてはうしろめたさはなかったのだが。
手放したことに後悔がないと言ったら嘘になるが、その時、他に選択肢はなかった。
ネットで当時のカタログを見ることがあるが、やはり斬新で先進性は今も感じる。
・・・かみさんには言えないが。
あんな小さな石に変わってしまうとは。
まあ、そこはお互い様なのかもしれないな。