自称オーディオファンの備忘録

オーディオが好きなおっさんのいろいろな話

ダイヤモンド

レコードに刻まれた溝をトレースして、溝の凸凹を電気信号に変換するのが、カートリッジの役割になる。したがって、溝に刻まれた凸凹を如何に正確にトレース出来るかが大切となる。レコード盤の溝の長さは、片面だけでも400~900mにもなるため、レコード針そのものは、少しでも摩耗が少なくなるように、通常ダイヤモンドが使用されていた。
カンチレバーの先端に取り付けられた針の動きを電気信号に変えるため、マグネットとコイルによる発電を行う。
コイルを固定して、マグネットをカンチレバーに取り付けて、発電を行うMM型(ムービング・マグネット)。
逆にマグネットを固定して、コイルをカンチレバーに取り付ける、MC型(ムービング・コイル)となるのだが。
重量的に軽量となる、MC型の方が追従性が良いため、一般的に高音質とされてきた。しかし、コイルの巻き数を増やすことが困難なため、出力電圧はMM型の約1/10程度しか出力できず、別途、アンプや昇圧トランスが必要になる。


さて、この小さな発電回路にも、少しでもロスを減らそうという努力が行われた。


レコード盤の溝の凸凹を、レコード針がトレースするのだが、その動きをコイルやマグネットにより正確に伝えなければならない。
つまり、わずか数ミリのカンチレバーにさえ、その伝達性能を求めたわけだ。
早い話が、カンチレバーは固ければ固いほど、針先の動きをより正確に発電回路に伝達できることになる。そこで、採用されたのが、地球上で一番固いとされるダイヤモンド。


レコード針もダイヤモンドなら、カンチレバーもダイヤモンド。
ダイヤモンド・針とダイヤモンド・カンチレバーを別々に作って、後で接合すれば比較的、容易に製造できる・・・のだが、接合部があるとせっかくカンチレバーをダイヤモンドにしたのに、その効果が薄れてしまう。
ということで、なんと一体型の針&カンチレバーが発売された。現在もオルトフォンが生産しているようだが、最上位機種は100万円越えだとか。


当時としては、そんな夢のような話にお金を出すような余裕もなく、比較的安価なMC型にアンプではなく、安価な昇圧トランスを買うのがやっとだった。


さて、それから数年後のこと、仕事で仲良くなったSONYの社員から、在庫一掃でカートリッジが安いとの話が飛び込んできた。
「欲しいものがあったら、とりあえず買っておくから後でお金と交換で。」


・・・在庫一掃で型落ちだと、期待薄かもな・・・


案の定、送ってもらったリストには目ぼしいものは見つからなかった。当時は今のようにIT化はほとんど進んでなく、連絡用の封筒で送られてきた。

社員さんには、その旨を電話で伝えた。


それから数日後、打合せでSONYに行った時、呼び止められた。話によると、その後、倉庫からMCカートリッジが出てきて、20000円で売ってもらえるとのこと。詳細をあらためて聞くと、XL-MC9ということがわかった。価格は60000円。片落ちとはいえ、1/3の値段。即決だった。


このMC9は、XL-MCシリーズの最上位機種。

カンチレバーは、ベリリュウムの表面にアモルファスダイヤモンドをコーティングしてあるという、訳がわからないが、それを20000円なら悪くない。


今、そのカートリッジは、休眠中のレコードプレーヤーの横にケースに入って同じく休眠中。。

いつか、またその音を奏でるときが来るまで。

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