自称オーディオファンの備忘録

オーディオが好きなおっさんのいろいろな話

無響室

社会人になって半年くらいが過ぎた頃、とある用事で東芝の磯子工場に出掛けたことがあった。


俺が入社する前に、Aurex SY-88の試作を手伝ったことがあったらしい。その時の残骸が会社の片隅に置いてあり基板を見たとき、パターン面の銅箔が異常に厚かったのを覚えている。通常は18ミクロンらしいのだが、その基板はガラスエポキシに0.3mmの銅箔を特注したとのこと。約18倍程度の厚みとなる。ハンダゴテで加熱しすぎると、普通は銅箔がくるりとめくれてくるのだが、これだけの厚みとなるとハンダゴテ自体もW数の大きな物が必要で、加熱しすぎるとポロっと落ちるらしい。


工場への用事はアンプ試作関係の打合せにだったのだが、せっかくだからということで工場内を見学させてもらった。


当時の東芝・・・オーレックス・ブランドが元気だった頃は、名機と呼ばれる機器を多く世に送り出していた。視聴用のリスニング・ルームなどを見学させてもらい、たまたま使っていないからということで、入らせてもらったのが、無響室。


音が全く反響しない部屋に初めてはいった。

人間の耳は、身の回りには様々な音が溢れている中から、聴きたい音だけを聴いているらしいのだが、

無響室だと、音を探しても何も聞こえてこない。自分の声さえ、反響が全く無い中では違って聞こえる。反響が無い中では気分的にもおかしくなる。

長時間の滞在は禁止されているらしいとのこと。


そもそも無響室は、反射音が全く無い状態でスピーカーなどの発音体の周波数測定などを測定する目的で使用されると思うのだが、普通に生活していては、絶対に経験できない環境なので良い経験をした。


日夜、こういった環境で各製品を研究・開発されていることを考えると頭が下がる思いである。

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