坊主刈り
小学校から中学に上がるとき、決まりというかルールがあった。なぜだか理由はわからないのだが、男子は全員、坊主刈りにしなければならなかった。
したがって小学校の卒業式には、男子は坊主頭で学生服を、女子はセーラー服を着て参加した。
さてその頃、フォーク・ブームなるものがあって、男子の中では、大きく分けて、拓郎派と陽水派に分かれていた。
といっても、当時フォークソングを好んで聴く生徒はあまり多くはなかった。
たまたま、俺はいとこが陽水のコピーをしていたこともあって、どちらかと言えば「陽水派」
一方、クラスの中には大人ぶって?拓郎を好んで聴いて、髪型も肩まで髪をのばしていた。50年前の田舎の男子小学生が肩まで髪をのばすことは、度々問題視され、PTAでも取り上げられるほど。
6年生の3学期、肩まで髪をのばしていたのはうちのクラスで2名だけ。
正に、拓郎の歌の通り、肩にかかっていた。
俺は陽水派だったが、拓郎派の彼とは妙に話が合うところがあって、陽水派の俺は拓郎の歌を、そして拓郎派の彼は陽水の歌を互いに認め合っていた。
俺は「旅の宿」を、彼は「傘がない」を気に入っていた。
さて、卒業式の前日、長髪の二人は長髪のまま、学校に来た。そして、卒業式当日、二人は見事な坊主刈りで、学生服を着て登校してきた。
安心するやら、拍子抜けするやら。
その後、クラスは別々になったので彼が拓郎ファンもまま過ごしたのかはわからないが「結婚しようよ」を聴くたびにこの事を思い出す。