Bメロをカット
スタジオ実習の講師が珍しくスタジオではなく機材の置いてある教室で授業を行ったことがある。
テープ編集の授業だった。
4~5人のグループに別れて1台のオープンデッキを順番に操作して、先生の指示通りの編集を行う。
オープンリールなので、編集はテープをカットして要らない部分を切りとった後、スプライシングテープで繋ぎ直す。
各人に与えられる課題は、ある楽曲の一部をカットして・・・例えば、イントロで繰り返される同じフレーズを1回分減らすとか、Aメロ・間奏・Bメロ・サビ、と続く構成をAメロ・サビにするとか。
しかも、テープスピードは、38ではなく19。
38は、1秒間に38cm。19はその半分の19cm。例えば、0.1秒ずれた場合、38では3.8cmだが、19だと1.9cmとなる。
デッキをポーズ状態にして、リールを手で回して編集ポイントを探る。見つかったらマーキングして、ハサミでカット。そしてスプライシングテープで貼ってはみ出したスプライシングテープを少し内側まで切り取る。はみ出してテープ走行に影響を出さないためだ。
そしてその結果を先生が聴いて判断する。
「0.2秒長い!」とか「0.05秒短いとか」
何人かの分を手直ししながら授業は終わった。
最後にこんな話をしてくれた。
現在はレジェンド的なポジションとなった有名な歌手の話。デジタル化してからはハサミを使ったテープ編集はなくなったが、それまでは数本録ったボーカルテープの良いとこを繋ぎ合わせて一本のマスターを作るらしいのだが、その歌手の場合は切り貼りが多くて、テープの裏はスプライシングテープだらけで真っ白だったと。
通常、磁気テープの裏面は茶色なのだが、スプライシングテープは白色のため、編集箇所は裏から見れば簡単にわかった。
多少大袈裟だったとしても業界では有名な話だったとか。